お母さんのアザを治療しに病院についていった

母親のこと
昔から、俺の母さんには顔の左半分に大きなアザがあった。

小学生の時なんか、授業参観は嫌で嫌で仕方なかった。

だって、恥ずかしかったから。

クラスメートは授業中も時々後ろを振り返っては、

「お前の母親の顔、どうしてあんな赤いの?」

って。

そんな風にいつも笑われるのが嫌で、俺は俯くことしかできなかった。

でも、そんな時も俺の母さんはいつも笑ってたよ。

自分が笑われてること知ってるくせに。

今までもずっと、そうやって好奇の目で見られてたくせに。

そうやっていつも笑ってる母さんが、俺にとってはコンプレックスの対象だった。

そんなある日、友達と遊ぶ約束をしていたことを忘れ、思わず言い訳した時に俺が友達に放った言葉。

「お母さんのアザを治療しに病院についていった」

もちろん嘘だよ。

咄嗟に出た嘘。

でも、そのことを母さんが知った時、初めて俺の目の前で母さんが泣いた。

もう涙ボロボロで。

しばらく泣いてたよ。

そん時、気付いたんだ。

母さんがいつも笑ってたのは、俺を信じてくれていたから。

俺はアザのことなんか、ちっとも気にしてないって、母さんはそう信じてたから。

あれから20年。

母さんは今も元気に笑ってる。

あの頃のままの、顔にアザのある母さんが大好きだ。

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