おばあちゃんの書きかけのメール

じいちゃん、ばあちゃんのこと
うちは両親が共働きだったので、私は小さいころからおばあちゃん子でした。

いつもおばあちゃんの部屋に行って、おばあちゃんがしてるお裁縫を見たりしていた。

そして、夜のお散歩に連れ出してくれたりするのが楽しみだった。

本当に歩くだけのウォーキングみたいなもので、今思うと何が楽しかったのかわからないくらいだけれど、それでもいつも嬉しくてくっついて歩いてた。

おばあちゃんと一緒にいるのが好きだった。

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中学にあがった私は、バスケ部でいじめを受け、不登校になった。

そして毎日、親から「学校にいきなさい」と責められるのがつらくてつらくて仕方なくなってしまった。

そんなとき、私は九州にいる歳の離れた従兄弟に相談し、家でを計画した。

そして家出決行の日、バスに乗ってからお母さんに「九州に行ってきます心配しないで」とメールを送った。

でも、当たり前だけど家は大騒ぎになって「警察に連絡します」「誘拐ですか!」と矢継ぎ早にメールがきた。

着信もガンガンなっている。

怖くなって、あわてて携帯の電源を切った。

それから泣きそうになりながら、座席に座ったまま「悪いことをしているんだ」と、ここでやっと気がついた。

バスがついてからは、すぐに家に電話をかけると、電話口からものすごく怒られた。

家に戻った後、お母さんは私の顔を見るなり、ものすごく泣きながら、怒鳴った。

そして、おばあちゃんには気まずかったのもあり、背中に「ごめんね」とはいった。

ただ、おばあちゃんからは、一言もないまま一週間が過ぎた。


おばあちゃんが倒れたのは、そんなときだった。

そして、そのままおばちゃんは亡くなった。

おばあちゃんが亡くなってから、呆然と遺品を整理していた私は、あまり持って歩いていなかったおばあちゃんの携帯をみてみた。

未送信の欄に32件とある。

日付は、私が家出した日だった。

開いてみると空白のメールがほとんど、書いてあっても

「いまどこにい」とか

「だいじょ」とか

打ち切れなかったんだろうメールばかりだった。


私は生前おばあちゃんが買ってもらったばかりの携帯で

「友達にめーるしたいんだけど」

って、ウキウキしながら私に、メールの打ち方や電話のかけ方をきいきた。

どうしてもうまくできなくて、何度も私に送ってみていたことや忘れてしまうのが恥ずかしいのか、

「もういいよ」

って照れ笑いをしていたことを思い出して、すべてのメールを開ききる前に携帯を見ていられなくなってしまった。


なんでもっとちゃんと謝らなかったんだろう、話さなかったんだろうとか、色んな気持ちでごちゃまぜになって、たくさんたくさん泣いた。


あれからもう20年も経つけど、今でも時々思い出すよ。

もう一度話せるなら、今度こそちゃんと

「心配かけてしまってごめんなさい。」

と、許してもらえるまできちんと謝って、またいつもみたいにお話がしたいよ。

おばあちゃん。

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